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ルパンの狙う次のお宝は、時価数億円の〈ダイヤのヴィーナス像〉。

何でも、デカい原石からカッティングしたってぇシロモンだ。

 『…でもって、次元が俺様に化けてヤツらのトコに乗り込む…っと!』

 『そりゃあ俺はイイが、お前さんはどうすんだ?』

今は仕事のミーティング中。

 『…それに五右衛門はどーすんだ?』

 『…あー、五右衛門は連絡取れねぇでやんの。…だから、今回は俺様と次元の2人だけ〜♪』

 『…大丈夫かよ?そんなんで…。…まあ、図面見た感じじゃあ、大した装備は無さそうだが…』

 『あ〜ら、次元ちゃんてば、心配性ねぇ〜。んな事、気にしてっとハゲっちまうぞ?』

 『喧しいッ!!お前がノーテンキだから、心配するんだろうがッ!!』

 『あら〜。俺様、愛されちゃってんのね〜♪』

 『…ば、莫迦野郎ッ!!…ったく。そんなんだから、心配なんだよ』

 『まあまあ、今まで大丈夫なんだから、これからだってダイジョーブ!』

 『――――はぁっ。…しゃあねぇ、ヤるとしますか…』

 『―それでこそ、俺様の相棒!…んじゃ、決行は、明日だ』

 『…へいへい…っと…。…ま、明日の用意でもすっかね…』

翌日。仕事の下準備中。

 『…あ〜、まらかぁ(まだかぁ)?』

 『…んー、も〜ちょい…。…イイぜ、ちょっと声出してみな?』

 『…あー、あー。…こんなモンか?』

 『ん!バッチシ!…まあ、俺様の癖やら口調やらコピー出来んのは、次元ちゃんだけね〜♪』

 『…こんだけ長く付き合ってりゃ、自然に覚えんだろ?…実際、銭形のとっつっあんだって、お前さんにバケたことあんだし…』

 『んー、だけっどもよぉ、や〜っぱ違ぇんだよなぁ?とっつっあんと次元ちゃんとは…』

 『…ま、変装はお手のモンのお前さんが云うことだしな?誉め言葉と、取っとくぜ?』

 『んふふ〜♪そーしてちょ〜だい。…さ、俺様も準備といきますかね〜』

 『…お前さん、誰にバケるんだ?』

 『…それは、見てのオタノシミ〜ってね♪』

 『…オイオイ…。俺が判んなかったら、どうすんだよ?』

 『…次元ば判る゙よ?…俺が、誰に化けてもな…。………デショ?』

 『――ッ!は、離せよッ!……ったく、手前ぇの゙顔゙に、よくこんなコトが出来るな?』

 『えー!?だって中身次元ちゃんだもん♪見た目なんか、関係ナイよ?』

 『〜〜〜!?あ〜もうッ!俺ぁ先に出るぞッ!』

「ダイヤのヴィーナス」が保管されている屋敷前。

 『…ここ、か…。』

一歩、足を踏み入れた途端に、ナイフが頭上から落ちてきた。

難なくそれを蹴り返し、中に入る。

 『……ジャマしようったってムダだっつーの』

ナイフを落としたと覚しき屋敷の主の前に立つ。

 『ルパン三世、ただいま参上……。ムフフフフ!』

部屋の中では、先程のナイフが当たったのだろう、腕から血を流している青年が、咄嗟に銃を構えるが、コッチの方が、断然早い。

 『…ムダだって言ったでしょ…?』

向けられた銃口を、ナイフ一本で、叩き落とす。

 『そんなモノ、ガラじゃナイでしょッ!!』

歴然とした力の差を見せ付け、お宝の保管場所に案内させる 。

案内された所は、裏庭に続く扉の前。

 『ここね……。ありがとさん』

扉を開く俺の視線の先に…「ダイヤのヴィーナス」

 『あーんな所にほっからかしにしといて、よくも今まで無事だったモンだな?』

見た目には、単なるだだっ広い裏庭。

そのド真ん中に「ヴィーナス」が安置されている石造りの祠が一つあるだけで、監視カメラや、その他の警報機などの存在は、確認出来ない。

 『いいえ。アナタだけでなく、今まで名のある盗賊達が何人も狙ってきましたよ………?』

俺を案内した青年が、質問に答えた。

 『…そして、死んだ奴もいれば、再起不能に陥った奴もいて、み〜〜んな諦めたんですよ』

青年は、淡々と話を終えた。

青年の言う言葉が、真実ならば…。

 『…なるほど、分かった。…てぇことは、だ。ここから、あの「ヴィーナス」のところまで……、防犯用の装置がギッシリつまってるワケなのね………?』

チラリと、20m程離れた「ヴィーナス」を見た。

 『…ってことは、これだけの装置があんのに、なぁ〜んでナイフに銃で俺を殺ろうとしたの!?』

念の為に質問してみた。

 『私の家は先祖代々、この屋敷の守衛ですから……。例えムダでも、反撃しませんと御先祖に申し訳たちませんから……』

…何処まで本気で、何処からが演技かは知らねえが、よくもいけしゃあしゃあと抜かしやがる。

 『…じゃ、アンタの責任は果たしたワケだ?……ほんじゃ、アレは貰っていってイイのね……?』

 『…どうぞ。この扉の先は、僕の管轄外ですから……』

その言葉に、一歩踏み出そうとした、その時もう一度青年が口を開いた。

 『……言っておきますが……、此処には防犯装置なんて、何もありませんよ?』

……今までのヤツらが失敗したのは、このセリフを深読みし過ぎたせい。

…面倒くせぇが、ヤツが出て来るまでは、ノセられとくか…

 『…またぁ!その手には乗りませんよ。オレを油断させようったって、そうはいかねえ』

疑り深く相手の話を信じない体を見せ付けた。

 『本当にナニもありませんよ…。…なんなら、私が歩いてみましょう』

俺の信用を得る為に、先に歩き出した。

 『…ホラ。私ならなんなくこの「ヴィーナス」のところまで辿り着きますが……』

そこで一旦言葉を切り、挑戦するかのように俺を見た。

 『……どういったワケか私以外の人で、ここまで辿り着いた人は、未だに誰一人としていないのです』

……ここまで言われたら、引くワケには行かねえ…。

どのみち、ヤツが現れるまでの時間稼ぎだ。

 『…考えてばかりいても、一歩も進まねえ……』

とにかくも、腹を決めた。

一歩踏み出した途端に、何かが俺の頭を直撃した

 『どうもすいませ〜〜ん!!』

頭を直撃したのは、ガキの野球ボール。
どうも、塀の外でしていたキャッチボールが逸れたようだ。

ボールをガキに投げかえし、少し間思案する。

 『…ありゃあ、防犯装置じゃねぇよな……?』

青年も、それに同意した。

 『あたりまえですよ。たまたま外でキャッチボールしてただけじゃないですか?』

…それは、確かにそうなんだが、何かが引っ掛かる。

 『…しかし、どうもイヤな予感がする……』

幸先が悪いと言うか…。

 『…一筋縄ではいかない、何かがある気がする…』

その俺の呟きに、したり顔した青年が、口を開く。

 『…そうなんです。不思議なんですよ。…別にこれといった装置もないのに……、その扉からここまで来るのは、私以外にいないんです』

不思議の「ヴィーナス」ってワケか…。
しかし、そんなコトで手間取る訳にゃあいかねえ。

 『オレの目的は、「ヴィーナス」を戴きに来たワケだから、そんな不思議を気にしちゃあいけないわな』

改めて、歩き出そうとする俺の前を小汚ねぇオヤジが横切った。

手には擦り切れた地図を持っている。

 『…わっかり難い地図だべなぁ…?…ちょっとそこのニイさん。ちょっとこの地図見てけれや』

差し出された地図を手に取り、一瞥する。

 『…ジイサン。あーた、まるで見当違いのトコに来てるよ』

差し出された地図によると、ジジイのムスコの家からは、山一つ離れている。

 『あ〜んれまあ!…そいじゃあ、どう行けばいいんかのぅ?』

トボけたツラのジジイを、青年に預け「ヴィーナス」に向かう。

 『詳しいコトはそのシトに聞ぃーたんさいな』

後ろも見ずに歩き出した俺の耳に届いた、絹を引き裂くオンナの悲鳴。

 『イヤ――ッ!!誰か助けてぇ――ッ!!』

……またかよ…。

半ば諦め半分に「ヴィーナス」に向かう足を、オンナに掴まれた。

 『お願いですッ!!助けて下さいッ!!』

俺の足に縋り付き、涙ながらに訴えかける。

 『……あのな、お嬢さん。オンナってぇものは何時かはケイケンするモンなんだから、四の五の言わないでちょーだいな』

…冷たい様だが、俺にゃあ目的がある。

さっさと「ヴィーナス」を頂いて、こんなトコからオサラバしたいのが本音だ。

 『……こんなオトコに犯されるくらいなら……、アナタの方がいいわッ!!』

…なんてぇコト言いやがる!このオンナ…!

――アイツなら、一も二もなく飛び付くだろうこのセリフ――

 『…正しく、悪魔の囁きだな…』

そんな囁きに耳も貸さず、ひたすら「ヴィーナス」に向かって突き進む。

 『…いいわ!こんなオトコに犯されるくらいなら、舌を噛み切って死んでやるッ!!』

そのセリフに思わず足が止まった。

 『…お母さん……、さようなら……』

思い詰めたそのセリフが、俺の体を呪文のように縛り付ける。

…あぁ、もうッ!!どうとでもなりやがれッ!!

『…助けりゃいいんだろッ!!』

やけっぱちで、オトコを叩き伏せ、オンナを助け、後も見ずに立ち去りかけた俺に、助けたオンナが、絡み付く。

 『…待って!…助けてくれたお礼がしたいわ…』

悩ましく絡み付く、オンナの裸体を押しのけ、「ヴィーナス」に向かう。

 『…気持ちは嬉しいけど、そりゃあ後でね?…今、オレの目的は…早いとこ「ヴィーナス」を手に入れたいの!分かるねッ?』

なんとか説得を試みるが、聞き入れない。

しかも、あろう事か俺のズボンを脱がし始める始末だ…。

途方に暮れて辺りを見回す、俺の視線がある人物で止まった。

ソイツの眼を見て、俺の腹が決まった。

 『―ヨシッ!分かった!!…俺も男だ!煮るなり焼くなり好きにしなっ!』

思い切りよく服を脱ぎ捨て、その場に寝転がる。

オンナが俺の上に跨り、いざコトに及ぼうとする間際に、堪えきれず笑い出してしまった。

 『ガハハハッ!もうヘタな芝居は止めなッ!!…どうせみんなグルなんだろう? 俺を「ヴィーナス」に近付けない為のさ?』

俺の問い掛けに、今まで黙っていた青年が口を開いた。

『…そうですよ。ルパンさん。今までのコトは全てお芝居ですよ』

開き直ったかに見える青年のセリフに、さっきのオヤジが慌てて話を遮る。

 『コリャ!ムスコよ!そうアッサリバラすモンじゃないぞッ!!』

慌てて話を止めようと駆け寄るが、青年は話を続けた。

 『大丈夫ですよ。お父さん!やっと今、カンペキな防犯装置が、完成しましたから…』

得意気に胸を張り、説明し始める。

 『今まで、ルパンくんが芝居に踊らされている間に、技術チームが完成させてくれたんですよ…』

勝ち誇ったように、俺を振り返り、手に持っていた鉄パイプを、「ヴィーナス」に向かって投げつけた。

投げられたそれは、「ヴィーナス」に当たる前に燃え尽きてしまう。

 『…バリヤーかッ!!』

そりゃあ、こんなモンがあったら、手も足も出ねぇ。

 『…そうか。完成したのか。……ちなみに、ちょいと訊きたいんだがな?』

 『万が一、あの中に入っちまったらどうなるんじゃ?』

オヤジの質問に答える前に、青年が固まった。

オヤジの姿は無く、変装を解いたルパンと、「ヴィーナス」の側に本物のオヤジ。

 『…ル、ルパンが…2人?』

眼を真ん丸く見開いたヤツの前で、俺もマスクを外す。

 『…悪ぃな、今までアンタの相手してたのは、俺だったんだよ』

煙草に火を点ける俺の横で、ルパンが笑う。

 『お前ぇらのお芝居も大したモンだったがな?俺達の前じゃ通用しねぇさ』

まだ、固まったままのヤツらを残し、悠然として屋敷を後にした。

…もちろん、お目当ての「ダイヤのヴィーナス」は、俺達の手の中ってワケだ。

「ヴィーナス」を抱え、仕事から帰った俺達は、アジトで祝杯を挙げた。

 『…先ずは、「ヴィーナス」に乾杯、だな!』

目当ての「ヴィーナス」を手に入れ、上機嫌のルパン。

 『…にしても、メンドウなヤツらだったぜ』

俺はと言えば、疲れた体をソファに沈み込ませ、バーボンを呷る。

 『まあまあ、次元の熱演のお陰で、アイツらの眼を誤魔化せたんだし?』

ルパンが俺に向かって、グラスを挙げる。

 『…お前さんが、ヤツらより一枚上手だったんだろ?』

俺もルパンに向かって、グラスを挙げる。

互いのグラスが、空中で触れ合うより早く、ルパンに腕を掴まれた。

 『…なにしやがんだ?離せよ!』

 『…そーいやぁ、次元ちゃんてば、コナかけられてたよねぇ…?』

微笑むルパンの後ろに黒いモヤが立ち込める。

 『―――!!?ありゃあ不可抗力だろうが!…大体アレはお前さんだと思って仕掛けて来たんだろッ!!』

 『…だって、次元ちゃんてば真っ裸になっちゃうし…』

―ナニ拗ねてやがんだ、コイツはッ!!―

 『―仕方無いだろッ!!ありゃあ成り行きだ!』

…あー、なんか馬鹿馬鹿しくなってきた…。

 『…次元ちゃんの体、みんな見てたし…』

―野郎の体なんざ見られたって減るモンじゃねぇだろう―

 『…だったら、お前さんの計画ミスだな』

 『…見られたく無かったんだろ?…俺の体を…』

ルパンの視線から、逃れるように、そっぽを向く。

減るモンじゃねぇとはいえ、好きで脱いだワケじゃねぇ。 脱がすに済むなら、脱いじゃいねぇ。

…だが、あのオンナ人の人のズボンに手ぇ掛けやがった。

思い出したら、腹が立って来た。

思わず、無言で拳を握る。

その俺の手に、ルパンがそっと触れてきた。

 『…済まねえ、次元。…確かに俺の計画ミスだな…』

項垂れるルパンに、ハッとした。

よく見れば、肩が小刻みに震えている。

 『…どうした?ルパン?…俺もちょいと言い過ぎた』

謝りの言葉を掛け、その肩を抱き寄せた。

 『…いいんだ、次元。あのオンナ見て、ちょいと考えちまっただけさ…』

――ナニ言い出すんだ?コイツは!?――

 『…もともと、次元ちゃんてばノーマルだし?…やっぱオンナがイイかなぁってさ?』

…なんか、さっきのオンナなんざ、どうでもイイ。…コイツに腹が立って来た…

 『…ほーぅ?…なら、俺が他の誰かとナニしてもイイワケだ?――フザけんじゃねぇぞ?』

―こちとら、どんな思いでシてると思ってやがんだッ!!―

 『―えッ!!?じ、次元?』

狼狽えるルパンを睨み据える。

 『…そうだな?…五右衛門か…、それとも、お前さんのライバルだし、銭さんか…?誰を選ぼうが、もうお前さんにゃ関係ねぇよなぁ…?』

…あぁ、オンナってぇなら、不二子もいるか…?

そんな俺のセリフに、慌てだす。

 『―や、あの…ちょっと次元ちゃん?…それ本気?』

俺の肩を掴み、顔を覗き込み、キツく抱き締められた。

 『ダーメッ!!駄目ダメッ!!次元は俺のでしょッ!!…他のヤツらになんか渡さないってぇのッ!!』

―やっと、ハッキリしやがった―

大体、コイツの独占欲は並みじゃねぇんだ。

 『…だったら、思ってもねぇ寝言ほざくんじゃねぇよ…』

珍しく、俺の方からキスを仕掛ける。

そんな俺に、少し驚いていたが、直ぐに調子を取り戻す。

 『…意地が悪ぃぜ?次元ってば…』

 『…お前さんが悪ぃんだろうが…。思ってもねぇコトほざくからだ…』

文句の合間に、甘いキスを与え合う。

ともかく、仕事が上手く行ったこんな日は、キスだけでは止まらない。

次第に深くなるキスと、重なる2つの影を見つめるのは、今宵の獲物の「ヴィーナス」だけ……。

Fin.





『魔王と死神』様に相互リンクお礼として書いていただきました!!
お仕事中はカッコいいくせに、帰って祝杯を挙げる段になると二人ともラブラブだわ可愛いわで大変な騒ぎですワタシが!!(お前かwww)
一心様、素敵な小説をありがとうございました!!
これからもどうぞよろしくお願い致します!!!

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