〜Holiday〜
―――キィ。
扉を開けて、薄暗い室内へ入る。ゆっくりと辺りを見回すと暗闇に慣れた目に、自分の身体に毛布を巻き付け、ベッドでミノムシのように丸まって眠る男の姿が見えた。
―――ちゃんとベッドに入ったなら上等だ。
デカい仕事の前の見慣れた光景、俺の日常。
全てを目の前のヤマに注ぎ込む。
寝ているのか、食べているのか、そんなことはあの身体には関係ない。ただ淡々と、最良と最悪の答えと、そこにたどり着く幾筋もの道を無数に弾き出す機械になる。
そういう男だ。
今更不満もあるわけもない、だってあれが"ルパン"だ。
あいつはそういう「モノ」なのだ。
ただ、
心配はしないのかと自問したら決してそれは0ではないけれど。
『……………大体、のめり込む時の容赦がなさすぎんだ』
相手にも、自分にも。
そういえばこの前、夜中にクシャミをしていた。
その前は少し食欲がなかったような気がする。
『……………無茶ばっかりしやがるから』
これだけ付き合ってるんだ、恨み事のひとつやふたつくらい言ったって罰は当たるまい。まぁ恨み事なんて大層なもんではなくただの独り言だが。
すると、
『そんなことねぇでしょ』
目の前のミノムシから声がした。
『…………起きてたのか』
『いやいや、寝てますよー』
よく言う。
だがこちらも久しぶりすぎる奴との会話でつい饒舌になる。
『………起きてんじゃねぇか』
『寝てますー』
『はいはいはいはい』
『なにそれ冷たーい』
『………ルパン』
『なーに?』
『………無茶、してねぇか』
『まー信用ないのねー』
『よく言うぜ。無茶しすぎてヘマすんなよ』
『もちろーん♪……俺を誰だと思ってんの』
ゆっくり落ち着いた声。
確かに、こりゃあ余計だったな。
『………そうかい。悪かったな、ぐっすり寝てるところに邪魔しちまったな』
軽口を叩きながら、自分も何故か安心したのでそのまま部屋を出ようとすると
『あ〜〜次元ちゃ〜ん』
『なんだよ、寝てるんじゃねぇのかよ』
『いや、寝てますよー寝てますけっどもー』
『けど、なんだよ』
『朝まで寝るには何だか隣が寂しいなーって』
片手でベッドをポンポン叩く音。
『…………やっぱり起きてんじゃねぇか。』
『寝てますよー』
ーーーこの野郎。
『………そうか、ルパンは寝てんだな』
『寝てまーす』
あいつの灰皿に煙草を置いて、ゆっくりとベッドに近寄る。
『………じゃあそのまま寝てな』
上から頬に手をやり、笑う男の隣に滑り込むと、待ってましたとばかりに身体に腕が回る。
子供かよ。
思わずその温かい体温の中で笑いが零れるが、
でも、
こうしてただの男のように甘えられるのも嫌いではないのだ、自分は。
仕方ねぇ
今夜は甘やかしてやるか。
end.
*
2012年のお誕生日に真史さんからいただきました!!アップ遅くなって申し訳ないです;;
ここぞとばかりにしたリクエストは『もふもふぬくぬくはぐはぐラブラブな旦那と嫁さん』だったんですけど、このもうもふもふぬくぬくはぐはぐラブラブ感・・・!! 幸せすぎてゴロンゴロン悶えまくりました←
イチャイチャしてんのがだいすきです・・・!!
真史さん本当にありがとうございました!!これからもどうぞよろしくお願い致しますー!!
'12/11/29 秋月