=好きだから、ちゃんと愛を伝えたくて=



ぱたん。扉を閉じて、周囲を見渡す。
普段なら、嫌という程嬉しそうな顔をして近寄ってくる次元が来ない。

「・・・・っち・・・・。」

イライラを表情に乗せる。帰ってきたら、あのバカで愛しいうさぎをきつく抱きしめてやろうと思っていただけだ。それなのに、うまくいかないこの感情に知らず苛立ちを感じて、足早に音のする方へ進む。

がたがた、と音がするのは・・・キッチン?


甘い匂いが近づくほどに強くなって、ひょい、と覗きこめば一生懸命次元がチョコレートを溶かしているところだった。


「・・・・・おい、次元。」

ー迎えも来ないで、何やってんだ・・・ー

ーもう、俺にはチョコくれただろう?ー

ー一生懸命作ってるそれは、一体誰のために。ー


悶々と頭を駆ける思考に、心が冷えて行くのを感じる。苛々する。


ーどうして、こうも・・・・・俺をかき乱す?ー


普段ならどんな状況でもクールで完璧な俺様が。


「くそ、」

ひとつ悪態をついて。そして、いつまでも気づかない次元が気づくよう、壁をドンと殴った。

「・・・・ッ?!」

当然驚いた次元は、身体をびくりと震わせる。耳も尻尾もぴーーんと逆立つ。

「何、してんの?」

にこり。怒りを押し隠して笑みを作ってやるが、俺様の気分は今最悪。
目も、雰囲気も、全てが笑っていないことに、次元も気づいているようで。

「あ・・・る、ルパン・・・・あの・・・・おかえりなさい。早かったな?」

本来なら、断然早く帰って来た俺様に、コイツは喜びたいところだろう。
まとわりつくように、嬉しそうに、満面の笑みで迎えるのがいつもだろう。
それなのに・・・・、
何 怖がってんの?俺様が怖いの?


ー好きって言ったくせにー


自分勝手な憤りを感じながら、次元に問う。

「なぁ、そのチョコ誰に作ってんの?俺様のじゃないよね。ご主人様のお迎えも来れないくらい、大事なわけ?」

「あ、あの・・・ごめんなルパン迎え、行けなくて・・・・。今日はきっと、ルパン帰って来ないと思ってたから・・・。」

「ふーん、わかってたの。」

「・・・うん、」

行く前は、帰ってくる?って聞いてたくせに。答えはしなかったけど、コイツは案外わかってんだ。

「そんで、誰の。」

早く答えろ、とばかりに短く問うと「五エ門とか・・・・不二子とか・・・・と思って・・・・、」だってさ。
ほらね。やっぱり他の奴の。俺様のじゃない。

いらいらいらいら。

理解できない程の怒りが巡って、ゆっくりと、次元のもとへ近づく。
次元は火を消して、近づいてくる俺をわけもわからず見つめていた。
その身体が小刻みに震えてるのは、なぁ、なんで?

「るぱ・・・・っん!」


頭を掴んで、口を塞ぐ。
次元の唇も歯列も舌も呼吸さえも自分のモノであるかのように、口内を犯していく。
震える舌先を絡めとり、自分の口内へ導いて歯を立てると、堪え切れないように次元は甘い吐息を漏らした。

「ふっ。んんっ・・・ぁ、はぁ、ふっう・・・ん、」

紅潮する頬に、とろりと潤む瞳。普段はバカで可愛いだけの次元は、乱してやると、いやらしくて艶のある表情を見せる。こんな姿、俺以外知らないだろう?誰も、コイツには触れない。触らせない・・・。

「や、る・・・ぱ・・・・も・・・・・ッ・・・・・・」

激しすぎるキスに息がもたないのか、次元は必死に俺の身体を離そうと、力ない手で押しやってくる。
無駄なのに。俺がお前を離すわけないのに。

頭を掴んでいた手を次元の身体に回して、きつく抱きしめた。
離さない、離したくない。

「次元っ・・・・・・、」

名前を呼ぶ。自分の声とは思えないくらい切なく響いて、次元も一瞬目を丸くする。

「は、ぁ・・・・ッ・・・・るぱん?」

心配そうに問いかけてくる、次元。俺様の心配なんて、してる暇あんの?
自嘲して笑う。おかしいよな、何でこんなに、コイツを独り占めしたいんだろう・・・・。

「な。次元・・・お前・・・・本当、バカだよな。」

「・・・・え?」

「いっつもさ、俺様に怯えちゃって。怖いんだろ、俺様のこと?」

「るぱ・・・」

「ひどいこととか、されて。言われんのも、嫌だろ?」

「・・・・・・ぁ、」

「好きとか言っちゃって・・・・そんなんで、俺様がお前に優しくなると思ったわけ?」

「ち、が・・・・」

「違わねぇだろ?そんな口先だけの言葉、いらない。」


そう言った瞬間、唇にガンってぶつかるようなキス。
そんで、俺の身体を押してた手も、一生懸命俺を抱きしめ返してきた。

ぎゅうううって、音がしそうなくらい、抱きつかれて。今度は俺が目を丸くする。
ぶつかった唇なんて、ずきずき痛むくらい。へたくそにも程があるだろう。


「・・・・何?」

「これくらい、好き!」

「は?」

「口先だけじゃ、ないもん!」

「じげ・・・・・、」

「本当に、ルパンが好きなのにっ!!そんな言い方、ひどい!!!」

「おま・・・・・っ・・・・?!」


肩に顔を埋めてたもんだから気付かなかった。何、何で・・・泣いてんの?


わけもわからず、でも、今まで冷えてた心が次元の温度で温まっていくのを感じる。


「・・・っ、ルパンなんて・・・・怖いし、乱暴だし、自分勝手だし、俺様だし・・・・っ」

泣きじゃくりながら、唐突に俺様の文句を言いだす次元に「ああっ?!」って怒鳴ってやるけど、負けないとばかりに次元は続ける。

「女好きだし、結構バカだし、ガキみたいだしっ・・・・」

「・・・・・ほぉ・・・・?」

悪かったな!と逆にふっきれたような自分の心が、怒りを感じてないのが不思議で。
いつもただ俺に従うだけの、次元じゃなくて。次元の素直な気持ちが聞けるのが・・・・嬉しい、のかもしれない。

「でも!」

「・・・でも?」


「でも好きなんだから!!!大好きなんだから仕方ないじゃねぇか!!!!//////」



ぼかって、頭を殴られたような感覚。
は、何それ・・・・・そんなにひどい俺様でも、好きってこと?

それを伝えたいだけに、ご主人様のこと散々罵って・・・悪いうさぎ。


頬はついにやけて、目だってきっといつもの鋭さなんてない。
でも、ま、次元からは見えないし・・・・今は良いか。

「ま、何にしても・・・・次元?」

「え?」

「好き勝手言っちゃってくれたオシオキは、もちろん受けるよな?」

「るるるっ・・・・っるぱ・・・・?!」


わざと怒ってるように耳元で囁いて。慌てて離れようとするうさぎを、ぎゅって抱きしめて捕獲。
逃がすわけ、ないでしょ。

「今日はたっぷりいじめてやるからな。」

「ご、ごめんなさいルパン・・・・あの・・・っ・・・・・」


さっきまでの威勢はどこへやら、耳をへにょりと曲げてあわあわと慌てる次元が可愛くて。
今日くらいは、ベッドの中で優しく愛を語ってやってもいいかな、と心で想う。


ー当然今はまだ、教えてなんてやらないけど。

Fin.





ニヤニヤが止まりません!!(爆)
なんて可愛いのーーーーー!兎さんが意を決して告白しちゃうところとか、もうたまりません(´д`*)ハスハス←
ツンツン俺様ルパン様も、兎さんに振り回されてるのが可愛いです! 唯一俺様の思い通りにならないものが、だからこそ愛おしいんでしょうねー!!
澪さん、素敵企画&テキストありがとうございましたーーー!!!

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