そういうところ、嫌いじゃない

 普段大人しい人間ほど、キレた時の反動というのは大きくなるものだ。 普段自分の欲求であったり感情であったりを押さえ込んでいるから、 何かの弾みで理性の箍が外れると本人でも手がつけられないような大事になる。 ストレス発散の苦手なタイプには、周りのほうが日頃から気をつけてちょっとずつガス抜きをしてやらないといけない。
 そして、その夜の次元ちゃんはまさにそんなキレた状態。
 真夜中に人の気配と圧迫感を感じて目覚めてみれば、なぜか俺の体の上には別々に寝たはずの次元の姿があった。

「えーっと…どうして俺様こんなことになってんのかな? 次元ちゃん…」
「うるせぇ黙れ」

 腹の上に乗られているせいでちょっと息苦しい。引き攣った顔で頭上を見上げてお伺いを立てるも、俺の疑問はあっさりと一蹴された。
 びっくりするくらいに冷たい次元の声。そりゃもう冷たくて吐息も凍るんじゃねぇのって思う程。 でもそのくせ俺をベッドに押さえつけてくるその手はびっくりするくらい熱くて、 熱でもあるんじゃねぇの? ってこれまた心配になるくらい。
 全く。どうしたってのよ一体。

「…どしたの次元ちゃん」
「……」

 俺の問いにも答えずに、黙って俺を見下ろしてくるその目は完全に据わってる。酒と煙草の香りが強い。 どうやら相当に酔っ払っているらしいのは確か。
 心当たりがないわけでもない。ここのところ仕事の準備だのなんだのと色んなことが重なって、 あんまり構ってやれてなかったからな。一匹狼演じてクールぶってる癖に、誰にも見せない本質の部分ではこいつは結構な寂しがり屋。 尤も本人にその自覚があるとは思えないけれども、だからこそ余計に性質が悪い。この様子だと相当キレてる。

「ちょっと次元?」
「…黙れ」

 次元が低く唸ったのとほぼ同時に唇を塞がれた。唇を割って侵入してくる舌に絡め取られる。いつもより濃い煙草と酒の味。 ここまで理性が吹っ飛ぶまでに一体どんだけ飲んだんだと呆れつつも、 滅多にない積極的な次元に俺もまんざらではないからちゃんと応えてやる。 最初こそ主導権を握られたものの、そこは俺。あっという間に主導権を取り返してキスだけで翻弄してやる。

「くそっ…」

 もうちょっとで大人しく落ちるかなって思ったのにその前に無理矢理引き剥がされちゃった。 追い縋って起き上がろうとしたけれど、胸を押し返されて呆気なくベッドへ逆戻り。 目一杯不満顔で見上げてやるけど、肩で息をしながら見下ろしてくる次元は何故だかちょっと悔しそう。

「お前は大人しくしてればいいんだ」
「へぇ…?」

 あまりに積極的な台詞。それ本気にしちゃってもいいの? お前から襲ってくれるなんて初めてじゃないの。

「今日はお前が乗ってくれるの? 最後まで出来るのか?」

 少し笑いを含んだ声で囁いてやればにやりと唇の端が持ち上がる。

「…もちろん」

 プッツンしちゃった次元ちゃんはいつにも増して負けず嫌いで好戦的。 それを分かってて挑発するみたいな言い方すれば、案の定乗ってきた。 まぁ夜這いに来てる時点で過分にその心積もりはあったのだと思うけれど。
 俺様、もちろん攻められるよりは攻める方が好きだけっども、たまにはこんなのも悪くない。 だってこんな積極的で自分から俺に乗っかってくれるような次元ちゃん、滅多に見られるもんじゃないだろ?
 あ、やべ、ここからの展開を期待しただけで俺様勃っちゃう。
 熱を帯びた唇が俺の胸元を這い回る。 うーん、それなりに気持ちいいけどもっと直接的な刺激が欲しいかな? そう思って軽く腰を動かせば、 「待ってろ。がっつくんじゃねぇよ馬鹿」って怒られた。ちぇっ。次元ちゃんのケチ。
 仕方ないからその間に手を伸ばして次元ちゃんのワイシャツを脱がせにかかる。 程よく筋肉のついた身体に手を這わせれば「んぅ」って喉の奥でくぐもった声が上がった。 酔っ払いの癖に感度いいこと。わき腹を撫で上げて胸の尖りを弄ってやればあっという間にはふはふ息を荒げだす。

「っ…だから大人しくしてろっての!」

 これ以上やられたんじゃいつもと何一つ変わらない状況になると思ったのか、 次元は慌てて俺の腹の上から手が届かない足の上に移動する。

「じゃあこっち」

 腰を浮かせてねだってみれば、ちょっと顔を顰められた。まあしょうがないか。 知ってるよ。お前、口ですんのあんま好きじゃないもんね? けど今日はお前がやるって言ったんだぜ?  口には出さないけどじっと見つめたら通じたらしい。渋々と言った様子で俺のパンツに手をかけて脱がせてくる。 さっきからの刺激でかなり元気になってる俺様のを目の当たりにして、またちょっと次元ちゃんの動きが止まる。 が、こうなって意地っ張りが引くわけもなく、意を決したように俺のを口に含んだ。

「ん…」

 不覚にもちょっと声が出ちゃった。それくらい気持ちいい。 女の子とデートしたりとかはしてたけど、セックス自体は結構久しぶりなんだぜこれでも。 ほら俺様こう見えて好きな子に一途だからさ。

「ん…ふ…んんっ…」

 あっという間に俺様の大きくなっちゃったから息苦しそう。でもそんな息づかいにさえ興奮する。 滅多にやってくれないからお世辞にも上手とは言い難いけども、 次元が俺を咥えてくれてるっていうシチュエーションだけでもイけちゃいそう。
 でもやっぱやられっぱなしじゃ俺の性に合わないよな。 そっと起き上がって、足先で次元の足の間を探ればビクッと次元の腰が跳ねた。衝撃で咥えた俺のに軽く歯が立つ。 ちょっと痛いよ次元ちゃんてば気をつけて。なおもそのままくにくにとまさぐれば途端に俺を咥えた舌の動きが緩慢になり、 口の端から堪えきれない喘ぎが漏れ出す。

「ん…ふは……んぅ…うう」

 もうこうなるとフェラどころじゃないってね。完全に手も口もお留守。そろそろ限界かね?

「次元ちゃん脱いで」

 ずるりと次元の口から俺のを引き抜いて囁けば、真っ赤な顔して軽く涙目の次元が俺を睨みつけてくる。 俺が大人しくしてないから怒ってる怒ってる。でもそんな顔したって興奮するだけだもんね。
 俺を睨みながらも言われるがままに下着ごとスラックスを脱ぎ捨てる。 顔を出した次元ちゃんのはろくに触ってもないのに濡れて勃ちあがってた。

「俺の咥えて興奮してたの?」
「…っ馬鹿やろ…っ!」

 あれまぁ真っ赤。図星でしょ。だから感度よすぎだって。そんなに溜まってたの?  それなのに女を抱きに行くわけでも自分で抜くわけでもなく健気に我慢して俺を待ってたのかなーなんて 思ったらそれだけで笑みが零れちゃう。 ホント健気な奴。そのくせ素直じゃないんだから。こんなにキレちまう前に誘ってくれれば、俺様いつだって襲ってやるのに。

「欲しいんでしょこれ。自分で出来る?」
「っ…」

 さすがに酷かなーと思ったけど、見てみたいっていう欲求の方が大きかった。一瞬本気で泣きそうなくらいに顔を歪める次元。 しまった、やりすぎたかな? でも俺がそう思った次の瞬間。

「お?」
「絶対…絶対見るなよ」

 突然、頭からバサッと脱ぎ捨ててあった次元のシャツをかけられる。遮られた視界の向こうで次元が唸るように言うのが聞こえた。
 ガタガタとサイドテーブルの引き出しを開ける音。多分、ローションを探してる。え、まさかホントに自分でやってくれんの?  でもそれを見れないんじゃ我侭言った意味がないけど、ここで見ちゃったら絶対殺されかねないけど、でも見たい。 俺がそんな葛藤と戦ってる間にも次元ははふはふ言い出した。

「ふ…ん…ぁ」

 鼻にかかった色づいた声。見れない分余計に耳に集中するから、いつにも増して色っぽく聞こえる。 くちゅくちゅと微かな水音が卑猥。 ああホント堪んない。見ちゃおうかな…。
 そぉっとかけられたシャツの裾を持ち上げ垣間見れば、自分の指を咥え込んで妖しく腰を揺らめかせる次元の姿。 快感よりも羞恥のせいだろうか。真っ赤に染まった顔。やばい、何てエロいのお前。健気なとこがすっげー可愛くて愛しくて仕方ない。

「ぁっ…うぁ…んんっ…」

 そのうち上がる声が切なげな色を濃くしてきた。いい感じに解れてきて、多分そろそろ指じゃ物足りなくなってきたんだと思う。

「んっ…も……るぱ…」
「もう限界?」

 名前を呼ばれたところで俺のほうも我慢の限界で、シャツを捲って次元をぎゅううっと抱きしめた。 噛み付くようなキスをして身体中を弄って耳元でお伺いを立てる。

「…自分で挿れれる?」
「う…」

 最初から次元が上っていう体勢っていうことは滅多にない。自分で挿れるのがキツイの知ってるからあんまり無理はさせたくないけど、 でも次元は小さく頷いた。
 ベッドヘッドに背中を預けた俺の胸元に片手をついて、もう片手で俺のを支えてそろそろと腰を降ろし始める。

「う……ふ…」

 喘ぎとは違う、ちょっと苦しそうな吐息。一番キツイとこだよな。 けど今更やめるわけにもいかねぇだろ? どうしても力入っちゃう次元を何とか落ち着かせようと、 腰とか背中とかちょっと萎えちゃった次元のとか擦って触ってやったりしてたら、 ものすごい時間をかけて、それでもなんとか自分で全部飲み込んだ。 詰めていた息を吐いただけでほとんど腰砕けで、がくがく震える身体は崩れ落ちないように俺に縋って支えているのがやっとの様子。

「大丈夫か?」
「う…なん…とか…ってちょ…ひうぁ! …ばっ…まだ動く…なっ…ひ!」

 優しくしてやりたいのは山々だけども、お預け状態が長すぎて俺様も挿れただけでイッちまいそう。 我慢できないで軽く腰を揺すってやるとそれだけできゅううっと中が締まって腹に濡れた感触。どうやら軽くイッたらしい。 これじゃもう次元に上は無理かな。全然手に力入ってない。
 腕を引っ張って体勢を入れ替わる。やっぱりこの方が楽なのか、ぎゅうっと首筋にしがみついてきて一緒に腰を揺らめかす。

「なぁ………寂しかったの? 次元」
「……あんま…放っとくんじゃねぇよっ……馬鹿」

 ああホント素直じゃないのお前って。でもそういうところ嫌いじゃないし、そんなことじゃ嫌いになれねぇよなぁ。

「ん、ごめんな」

 素直に謝って甘いキスを落とせば、それだけでご満悦。素直じゃないくせに素直。ああもう可愛くて仕方ないね全く!
 でも今度からは程ほどに欲求不満は解消してあげないと。溜まる度に毎回こんな可愛いことされたんじゃ、俺様心臓がもたないっての。

Fin.

【あとがき】
えーと随分お待たせしてしまいましたがツイッターで澪さんからリク頂いたSSをようやくアップしました〜
リク内容は確か『珍しく積極的で自分からルパン様押し倒すような次元さん』的な内容だったはずなのですが…(あやふや)
リプをふぁぼるのを完全に忘れててwww澪さんゴメンなさいwww
でも内容はだいたい合ってるはず…!騎乗位って滅多に書かないから面白かったけど結構難しかったですw
お待たせした挙句にこんな出来で申し訳ないですが少しでも楽しんでいただけたらと思います〜!
それではリクエストありがとうございました!!

'12/04/09 秋月 拝

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