甘い甘いデザートをどうぞ

「ルパン、飯だぞ?」

 とある昼下がり。昼ごはんというには少し遅い時間に、次元は相棒を呼ぶ。 尤も、朝起きたのも遅ければ朝ごはんだって遅かったのだから、別段大して問題があるわけでもないのだが。

「やった、飯、飯! 腹減った〜!!」

 部屋でなにやら一心不乱に機械いじりをしていたルパンだったが、その声を聞いて片付けもせずにダイニングへ飛んでくる。

「あれ? 五右ェ門は?」
「昼飯はいらねぇとよ。用があるとか言ってさっき出かけていったぜ?」

 聞いてなかったのか? 言いながら、次元は怪訝そうにルパンを見る。 律儀な五右ェ門がルパンに何も言わず出て行くなんていうことは滅多にないから、何かしらの言葉はかけられているはずなのである。

「ん〜? そういや返事した覚えがあるようなないような…」

 つまりはそれだけ作業に熱中していたということなのだろう。一体何を作っていたのかは知らないが。 1つことに熱中すると周りが見えなくなるのはまるきり子どもの行動パターン。 良くも悪くもそれがルパン3世という男なのではあるが。

「おほ! 美味そう〜♪」

 キッチンに用意されたメニューを見るなり、ルパンは小躍りし始める。今日のメニューはミートパスタ。ソースも次元のお手製だ。

「いいから、手、洗って来い」

 そのまま食卓につこうとしたルパンを押しやり、次元はテーブルの準備を始める。

「ケチー」
「腹痛起こしてもいいんなら、そのまま食え。もしそうなっても俺は看病なんかしてやらねぇからな」
「…わかりましたよー」
「ったく、本当にまるっきりガキだな…」
「何か言った?」
「何も言ってねぇよ!」

 言われたとおりに手を洗って大人しくテーブルにつくルパン。 ほかほかと湯気をたてている皿を目の前に置いてやると、にまぁっとその顔が緩んだ。

「ん〜お前の作ったパスタ美味いんだよね! 湯で加減といいソースの味加減といい、絶妙!!」
「褒めても何も出ねぇぞ」
「んだよ、俺が褒めてやってんだから素直に喜べよなー」
「はいはい、あんがとよ」

 そんなことを延々と言い合いながら、次元もテーブルにつく。

「いっただっきま〜す!」

 言うが早いか、ルパンはがつがつと食べ始めた。思わず、『ちゃんと味わえてるのか?』と訊きたくなるような勢いだ。

「美味い!!」
「…もうちょっと落ち着いて喰えねぇのかよ? あーあー、ほら。そんなにソース飛ばして…」

 これでは子どもよりも性質が悪い。問題なのは、目の前にいるのが子どもではなく、いい歳をした大の大人だということだ。 だが、これくらい豪快に食べてもらえるのなら作った甲斐もあるというもので。 次元自身は食べれればなんでもいい、というところがあるから、一人ならばこんな手の込んだものを作ることはまずない。 料理をしようと思うのは、ひとえに作ったものを美味そうに食べてくれる同居人がいるから。

(…でもこれって完全に主婦の思考だよなぁ…)

 そんなことを考え内心で苦笑していると、ふとルパンが顔を上げた。

「なんだ? お前喰わないのかよ?」
「喰うけど……おい、お前。顔にソース付いてるぞ?」

 こっちを見つめてくるルパンの口元にはソース。 こういうのは端から見ると『何で気付かないんだ?』と思うのだが、本人はなかなか気付かないものらしい。

「え? どこ?」

 慌てて口元を拭うルパンだが、肝心のところはなかなか取れず。 どこどこ? と顔中を拭いだすルパンに次元は思わず笑ってしまう。これでは本当に、子どものようだ。

「…何笑ってンだよ」
「あー、もう。ほら」

 ひょい、と。 次元は、伸ばした手で口元を拭ってやる。

「ほら、取れ…」

 言いかけた次元だったが、その途中で絶句した。
 ソースのついたその指先を、ぱくり、とルパンの口が含んだのである。

「な…!!??」

 指を奪い取ることすら忘れ、ただただ硬直する次元。

「ん〜やっぱ美味いね〜」

 まるで指先を愛撫するかのように執拗に舐めたあと、ルパンはニヤリと笑った。ぺろりと舐める口元が、妙に色っぽい。

「てめ…わざとやったな!?」
「油断して引っかかるお前が悪い。俺のことガキみたいとか思ってたんだろ?」

 ふふん、と、鼻で笑うその顔はこの上なく挑発的。

「それじゃあデザートには…大人の俺を堪能させてやるぜ?」
「…馬鹿野郎」

 真っ赤になってそっぽを向く次元の頬に、小さなキスが落とされた。

fin.
Happy birthday dear Masafumi!!

【あとがき】
いつもお世話になっております『あれもこれも夢じゃないぜ』の管理人・真史さんのお誕生日プレゼントとして書かせていただきました〜
リクエストは『可愛いルパン様に微笑ましくなる次元さん。でもやっぱりカッコいい旦那様』とのことでした。
リクを頂いた瞬間から、ほっぺにソースを付けた子どもみたいなルパン様が頭から離れなくなってしまいましてこんなことに…;; なんかすみません;;真史さん、こんなものでよろしければどうぞお持ち帰りください!
お誕生日おめでとうございます!!新しい1年が素敵なものになりますように!!

'11/05/20 秋月 拝

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