星に願いを、お前に愛を

「じ〜げ〜ん〜ちゃん♪」

 アジトに帰ってくるなり、ルパンは次元に抱きついてきた。

「な…何しやがる!」

 ちょうど煙草に火をつけようとしていた次元は、危うく自慢の髭を焼きかけてしまう。

「気をつけろよ! 火傷するじゃねぇか!」
「今日は何の日か知ってる?」

 眉間にしわを寄せて唸る次元に、ルパンは悪びれもせずに問うた。

「あん?」
「今日は七夕よ、た・な・ば・た!」
「…そういやそうか…でもだからってどうしたってんだ?」

 クリスマスだのバレンタインだのならいざ知らず、七夕どころでこの男がこれほどテンションをあげている理由がわからない。

「七夕ってのはお星様にお願い事をする日でしょ?」
「…いや、その認識はちょっと違う気がするんだが」

 確かに笹に飾る短冊に願い事を書いたりもするが、ルパンの認識はちょっと違う気がする。  とはいえ、その認識不足を補ってやれるほどの知識が、次元にあるわけでもない。そういうのは多分、五右ェ門の得意分野だ。

「別にいいじゃんか。なぁ次元ちゃん、俺のお願い事聞いてくれる?」

 ソファに座る次元を後ろから覗き込む。

「生憎だが、俺はお星様じゃねぇぜ」

 仰け反ってルパンの顔を覗き込み、次元は唇を歪めた。
 が、ルパンはそんな次元の顔を見てカラカラと笑う。

「んなこたぁ、知ってるよ。けどお星様にお願いするより、本人にお願いしたほうが早いだろ?」
「夢のねぇやつ」

 あっさりと言い返され、ルパンはその言葉にまた笑った。

「でもまぁ折角だから、お星様にお願い事してみようかなぁ〜」
「何て願うんだ?」
「ん? 世界人類の平和でも」

 ケロリとした顔で言ったルパンに、今度は次元が笑う番だった。

「いつから慈善活動家になったんだ?」
「自分の力でなんともならねぇことだから、お星様に願うんだぜ? どーにかなることだったら、星に願うよりなんとかした方が早いだろーが」

 全くの正論だが、盗めないものはなにもない、出来ないことはない大怪盗の理屈だ。
 一般人には真似のできることではないだろう。

「ってことだから、俺様のお願いはあっちで…な?」

 にやっと笑い、ルパンは次元の耳元に甘い囁きを落としたのだった。

Fin.

【あとがき】
七夕SSSル次Ver.
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