帝国からN国までの旅程は長い。
まず船2時間かけて近隣の港へ入り(この港も帝国の息のかかった港であるが)、それから車で3時間かけて空港へ移動。
空港からN国までは、実に8時間ものフライトになる。
実習担当の教師からそう聞かされていたものの、そんなにも長時間乗り物に乗ることなど普段ないせいで、
次元は空港に着いたあたりで、すでにグロッキー状態だった。
だいたい、島から出るのだって何年ぶりだろう? という状態なのだ。
「おい、大丈夫か?」
「…あんまり」
ルパンにそう声をかけられても、鞄にもたれかかってぐったりしたまま、次元は答えた。
「…お前、よく飯なんか食う気になるな?」
次元とは対照的にぴんぴんしているルパンは、さっきからサンドイッチなんかかじっている。
「お前も食ったほうがいいと思うけど? んで、やっぱり乗り物酔いの薬飲んどけよ」
「薬嫌いなんだけどな…どーせ効きにくい性質だし…」
ルパンにわけてもらったサンドイッチを頬張り、ついでに、母親に持たされていた酔い止め薬も一緒に水で流し込む。
「…なんつー飲み方すんだよ」
「飲んだんだからいいだろ。俺は寝る」
「寝るって、もう飛行機出るぞ。寝るんなら乗ってからにしろ」
これでは傍から見たぶんでは、どっちが年上だか分からない。
搭乗手続きをすませて、飛行機に乗る。
指定された席は、翼より後ろにある窓際の2席。
「…お前、窓際行けよ」
チケットと自分達の席を見比べ、次元はルパンに言う。
「なんで?」
一瞬眉をひそめたルパンだったが、次の瞬間、にやぁと口元を緩めた。
「はは〜ん、お前、怖いんだろ」
「ばっ…誰が!!」
「飛行機も初めてだろ? そりゃしょうがねぇよな〜」
「怖くなんかっ…!! お前こそ、んなこと言って窓際俺に座らそうとして…怖いんじゃねぇのかよ!?」
「俺が? じょーだん! だって俺、自分で操縦だってできるんだぜ?」
「それとこれとは関係ねぇだろ!」
「…あの〜お客様、当機はまもなく出発しますので、そろそろお席に…」
スイッチの入ってしまった2人は、辺りの目を憚ることなく大声で喧嘩を始めてしまった。
騒ぎを聞きつけたCAが間に割って入ろうとするが、頭に血の上ったお子様たちは目もくれない。
「怖くないんなら、お前が窓際行けよ!! …顔、ひきつってるぞ。やっぱ怖いんだろ」
「怖くねぇ! お前こそ怖くないんなら窓際行けって!」
「あの〜…お客様〜…」
「お前が座れ!!」
「い〜や! お前だ!!」
「…いいかげんにしなさ〜い!!!」
N国行き飛行機は、予定時刻を10分もオーバーして飛び立つこととなり、その原因になった2人が大目玉をくったのは言うまでもない。
Fin.
【あとがき】
タイトルどおり、続き物の3と4の間に入るミニエピソードです。
ジャリ次元は実は怖がりだといいよ! てか大人次元も実は怖がりだといいよ!!←
*一部加筆修正しました*