酔っ払いとズルイ男

その前の夜から1日俺は不二子ちゃんとお楽しみ…の予定が、いつもの通り獲物だけ盗られてさようなら。 傷心のままアジトに帰ってみると、さらにはそりゃもうお怒りモードの相棒がお待ちかねなわけで。

「どこ、行ってたんだ…?」
「えーっとぉ…」

 いつから飲んでいたのかは知らないが、あの次元が酔っ払うほどだから相当な量だろう。 見れば部屋の床には、俺の取って置きの酒がごろごろ空き瓶になって林立している。 あーあ、今度のヤマが終わったら飲もうと思ってたのになぁ…。

「なぁ? ルパン。聞いてんのか?」

 剣呑な目つきでじりじりとにじり寄ってくる次元に、俺はあっさり壁際に追い詰められる。

「次元ちゃん…随分ご機嫌ナナメじゃないの…?」
「ぁあ? 機嫌も悪くなるだろうがよ、これじゃぁなぁ」

 そう言って指さすのは、先日二人で仕事した際に手に入れた宝石が入れてあったガラスケース。 とはいえ、今はその中に輝く宝石はなく空っぽ。 それもそのはず、昨日不二子ちゃんへのプレゼントで俺が持ち出したのだから。結果はもちろん、前述したとおりだが。

「で? あっさり不二子に獲物を盗られて? のこのこよく帰って来れたよなぁ? いい加減学習したらどうだ?」

 まさにただの酔っ払い。言葉を紡ぐ度に酒くさい息が吐きかけられる。 …でも…据わったくせに潤んだ眼、上気した顔。ああもう、ちょっと何これ。 そんな顔で寄られたんじゃ、俺様ちょっとヤバイかも?

「っざけんじゃねぇよっ…たくよぉ…お前さぁ…」
「…次元…?」

 俺の襟元に手をかけて、ぐだぐだと悪態をついてくる。でも、ちょっと俯いた顔が一瞬とても儚げで、哀しげで。 …まさか……、まさかね。

「…詫びのひとつくらい入れたらどうだ?」
「ちょっと、次元ちゃん。どっかのヤのつく仕事の人じゃないんだからさ…」

 …一瞬期待した俺が馬鹿みたいだぜ。

「…ねぇ次元?」
「ぁあ? んだよ?」

 とろんとした瞳が俺を見上げる。 そんな顔してさ、俺様、狼になっても知らねぇぜ?真剣な次元には悪いけど、我慢なんてこの俺様には似合わない。そうだろ?
 ちょっと熱っぽい顔に俺の顔を寄せ、耳元で囁く。

「…お前、さ。…寂しかったの?」
「なっ……ばっ…」

 酒のせいだけじゃない、一瞬にしてさらに真っ赤になった顔。 相変わらず隠し事が下手だねぇ。でも、その顔が見たいから…つい苛めちゃうのかもな?
 二の句を継げないでいる唇に、俺は自分のそれを重ねる。酒と煙草と…次元の香り。

「じゃあ、お詫びも兼ねていーっぱい愛してあげちゃう」
「なっ…話が逸れてるっ…ちょ…おろせーっ!!」

 その後? もちろん朝が来るまで愛し合っちゃったりして。おっと、野暮は言いっこなしだぜ? どーしても聞きたい、ってなら…またそのうち。な♪

Fin.

【あとがき】
嫉妬する次元さんをルパン様目線で。
そのまま次元さん目線で書くとどうしてもぐだぐだ暗くなっちゃので(苦笑)
この続きも裏にありますー。

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