「なぁ次元ちゃ〜ん、クリスマスプレゼント何が欲しい?」
「は?」
いつもと変わらぬ昼下がり。
仕事も特に差し迫ってはおらず、寒くなってめっきり外出することも少なくなり、
アジトのコタツでまったりとした時間を過ごしていると、ルパンがそんなことを聞いてきた。
クリスマスまではあと数日。そろそろ準備しなければ間に合わないということだろう。
尤も、コタツに蜜柑という純和風なアジトの一室でクリスマスの話などされても、どうもリアリティに欠けると思うのだが。
「クリスマスのプレゼント。何がいい? 不二子ちゃんと五右ェ門にはもう聞いて用意したんだけどな」
不二子にはダイヤモンドの指輪だとか(これは毎年のことだ)。
五右ェ門には新しい着物だとか(おそらくすぐに修行でボロボロにするからだろう)。
「で、お前、何が欲しい?」
「はぁ…」
真面目な顔で聞かれるが、次元はなんとも力の抜けた返事を返すしかない。
煮え切らない次元にルパンは拍子抜けしたのか、怪訝な顔になる。
「欲しいものねぇ…」
「欲しいもん、ないのかよ?」
「…急に言われてもなぁ…」
元来が大して物に執着を持たない性質だから、急に『欲しいもの』なんて言われても困るのだ。
「スーツも帽子も新調したばっかだし…あとは美味い酒か…」
「お前が物欲の薄い奴だってのは知ってるけっどもよ。
そういう消耗品じゃなくて、記念に残るものにしようぜ?」
ルパンに呆れたように言われても、次元はますます困惑するばかりだ。
「んなこと言ったってなぁ…五右ェ門だって消耗品だろ。着物なんて」
「わかってないねぇ。恋人には特別なものあげたいって思うのが人情だろ?」
「こ…恋人…」
その表現はやめて欲しいと思うが、こういうときに言っても無駄なことは経験済みだ。
せめて五右ェ門や不二子がいないところでの発言だっただけよしとしよう。
「あー…じゃあお前は?」
「俺?」
逆に質問を返されて、ルパンはきょとんとした顔を見せた。
「そう、お前。お前何が欲しいんだよ」
次元としてはうまいこと話をすりかえたと思ったのだが。
「俺様は、次元ちゃんがいてくれたらな〜んもいらないもんね!!」
この上ない満面の笑みでそう返されて、次元はげんなりと肩を落とした。
「…………アホらし…」
「アホってことはねぇだろ!」
これにはさすがのルパンもむっとした表情になり、コタツの上にあった蜜柑を次元に投げる。
「あのなぁ…」
投げられた蜜柑を受け取り、その皮を剥きながら次元は嘆息した。
その先を言うべきかどうか逡巡しているらしく、口を開きかけてはまたため息を零す。
「何だよ?」
そして、ルパンに促されようやく諦めたように口を開いた。
「…こんなこと言うのはこっ恥ずかしいんだけどもな、
俺だってお前と美味い酒が飲めれば、別にクリスマスなんかどうでもいいんだぜ?」
目深に被った帽子のせいでその表情まではうかがい知れないが、照れているのかルパンのほうを見ようとしない。
そして、一瞬虚をつかれたようにぽかんと口を開けていたルパンだったが、ようやく意味を理解したらしく、
満面の笑みで次元に飛びついた。
「次元ちゃ〜〜〜〜〜〜ん!!」
「やめろ!!!」
抱きついてくるルパンを押しのけ、その口に剥いた蜜柑を突っ込む。
「ひへんひゃん、ひほひ〜!(次元ちゃんひどい〜!)」
「うるせぇ! 抱きつくな!!」
* * * * * *
「メリークリスマス!!ルパンサンタからプレゼントだぜ♪」
クリスマス当日。
イベント大好きなルパンの趣向もあって、クリスマスを4人で祝うのは毎年のこと。
サンタに扮装したルパンが、プレゼントを配ってまわる。
「きゃー! ルパンありがとう〜〜〜」
「かたじけない」
不二子と五右ェ門がそれぞれ受け取る。と。
「あら? 次元には何もあげないの?」
1人空手な次元を見て、不二子が怪訝な顔を見せる。
「ん? 次元はいらないんだって〜だからいいのいいの」
「何故だ?」
五右ェ門も不思議そうに次元を見やる。
「次元は美味い酒が飲めればそれでいいんだってさ」
「まー、欲がない男」
呆れたように不二子が言う。彼女からすれば、プレゼントがいらないなど考えられない話だろう。
「拙者も見習うべきであろうか…」
修行が足らぬ…と五右ェ門が呟く。
「いいんだよ、別に」
「な?」
ルパンと次元は顔を見合わせて笑った。
メリークリスマス。一番のプレゼントは、あなたがそばにいること。
Fin.
【あとがき】
ノープランで書き始めたら、クリスマス関係あるようなないような、いつもと大して変わらぬイチャコラぶりにだけなってしましました…
でもクリスマスってイチャコラする日ですよねってことでご勘弁ください;;
最後まで読んでくださってありがとうございました!!メリークリスマス!!
'10/12/24 秋月 拝