おしおき

「ん…ぁ…ふぁ…」

 薄暗い闇の中に、甘い吐息が溶ける。
 撓る白い背中に唇を落とし、前に回した左手で胸の尖りを弄ってやると、
俺の指を咥えこんだ後ろがきゅっと締まった。

「イキたいか?お前が謝ったらイかせてやるよ」

 耳元でいやらしく囁いてやると、五右ェ門の身体がびくりと震えた。

「だ…れがっ!」

 背中越しに、俺を睨む。目元をほんのりと赤く染め、それでもなお強情に抗うその姿が、
余計に俺を興奮させるということを、こいつは知っているのだろうか。

 きっかけは些細なケンカだった。
大した事でもなかったのに、俺の言い分に五右ェ門はいたく腹を立てたらしく、
あてつけの様にずっと前から約束していたデートで、一言も口をきかないという暴挙をしでかしたのだ。
最も、そこで約束をすっぽかすとかいうことにならないのが、律儀なこいつらしいとは思うのだが。
そして、今度はそれに腹を立てた俺がアジトに帰るなり五右ェ門をベッドに引きずり込み、今に至る。というわけである。

「ふーん、じゃあここまでだな」

 本当はこれで終わるようなつもりはさらさらないが、あっさりと指を引き抜き、身体を離す。

「次元…」

 切なげな吐息と共に目元を朱に染め、背中越しに俺を見る。

「イキたかったら自分でやれよ」

 ニヤリ、と笑うと、五右衛ェ門はその頬を今度は怒りでかっと紅く染めた。

「じっ…次元おぬしっ!!」

 これは、おしおきだ。
 俺は五右ェ門が一番嫌がることを要求した。
 常日頃から煩悩だの己の欲求を断ち切るために修行を怠らないこいつは、
自分でする、ということにひどく罪悪感を覚えるらしい。
 だがここまで焦らしに焦らした身体はもう限界のはず。
今更自然におさまりがつくはずがない。
それで放っておいたら、一体このストイックな侍はどうやってその熱をおさめるのか、俺はそれが見てみたかった。

「おぬしという奴はっ…!!」

 羞恥と、快感と、怒りと。
いろんな感情でない交ぜになった五右ェ門はわなわなと身体をふるわせ、反射的に枕元へ手を伸ばすが獲物の斬鉄剣はそこにはない。
 脱ぎ散らかした互いの服と一緒に部屋の隅に転がっている。

「さぁどうする?」

 にやにやと笑ってやると、五右ェ門は俺をきっと睨みあげる。

「…覚えておれよ」

 捨て台詞のようにそう言うと、ゆっくりと起き上がり、俺のほうに向き直る。
 怒りよりも羞恥よりも。今はともかく生物としての本能に従うことにしたらしい。
 ヘッドボードに背を預け、そろそろと足を開く。
 その合間で、勃ちあがった五右ェ門の性器が震えた。

 喉がゴクリと鳴った。
それは俺のだったか、五右ェ門のだったか。とにかくも、こいつは結構な眺めだ。

「…はぁ…」

 薄く開いた唇からため息のような吐息がもれた。
張り詰めた自分自身に手をかけ、その形をたどる。

「ん…ふ…ぁ……見る…なっ」

 ゆるゆると勃ちあがったものを扱きながら、羞恥に頬を染め、五右ェ門は顔を背けた。
 痛いほどに俺の視線を感じているに違いない。
俺は食い入るように手淫に興じる五右ェ門を見つめていたのだから。

「もっと見せろよ」

 俺の視線に耐え切れなくなって閉じようとした膝をこじ開ける。
 荒い息に交じる水音。あふれ出た先走りがその手を濡らしている。

「こっちはいいのか?」

 さっきまで俺の指をくわえ込んでいた場所をつついてやると、そこはヒクッと物欲しそうにうごめいた。

「やめっ…」
「入れてみろよ」

 あくまで俺は手を出さない。

「う…くそっ…」

 性器を嬲る左手はそのままに、右手をそろそろと下ろしていく。
一瞬の逡巡のあと、程よくほぐれたそこに、つぷりと中指を差し入れた。

「んはぁ」

 切なそうに顔をゆがめ、白い喉が反る。
 中と外と両方からの刺激で絶頂へと上り詰めていく様は、壮絶なほど色っぽい。
 ゆらゆらと揺れる腰が淫らに俺を誘う。

「じ…げ…」

 情欲にかすれた声が俺を呼ぶ。

「次元っ…!」

 もう自分で与える刺激だけじゃ満足できなくなっているのだ。
 お前が欲しいと、黒い瞳が口よりも雄弁に語る。

「そりゃ反則だぜ、お前」

 たまらなくなって、俺はその喉にむしゃぶりついた。
 自分の指を咥え込んだ五右ェ門の後孔に俺の指を一緒にねじ込む。

「ひっ!!」

 逃げかけた腰に腕を回して身体を寄せる。中で絡んだ指が一番弱いところを刺激し続け、五右ェ門はあっという間に上り詰めた。

「あぁっ…!!も……くっ!!」

びくびくと身体を震わせて、五右ェ門は絶頂に達した。
俺の胸に腹に、五右ェ門の放ったものがかかる。
 そのままくたりと俺にもたれかかり、荒い息をつく。

「お…ぼえて…おれよ、次元…」

 この後に及んで息も整わぬ間にそんなことを言う五右ェ門の額に、チュッとキスを落とした。

「よく出来ました。じゃあご褒美をやらないとな」

 ぼんやりとした瞳で俺を見上げる五右ェ門をベッドに押し倒すと、張り詰めた俺の分身を埋め込んだ。

「…あああ!!」

 まだ夜は長い。今夜は寝かせるものか。





 この扱いに本気で怒った五右ェ門が、さらに1週間一言も口をきいてくれなくなることを、このときの俺はまだ知らない。

Fin.

【あとがき】
ジゴの日、ということで特別感を出すべく、ついにアップしてしまいました。
えろです。でもえろくない…くそう〜色っぽいゴエが書きたいな〜
ひとりエッチするゴエが書きたかったんですけどね。
次元がSっぽいな。でもヘタレだな(笑)

'10.04.05 秋月 拝

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