次元は俺に冷たいと思う。
そう言ったら、ルパンは一瞬きょとんとした顔を見せた後弾かれたように笑い出した。別に笑わなくったっていいじゃねぇか。
「まぁそう怒るなって。なんでそう思うんだよ?」
だって、次元は自分のことを全然話さない。知らないうちに厄介ごとに巻き込まれるし、それを俺には絶対言わないし。それにたとえ事前に知ったとして、俺がどんなに心配したところで最終的には『お前には関係ないだろ』って言い出すんだ。関係ないわけないだろ。だって俺は次元とはただの仕事仲間じゃないんだぞ。心配して何が悪いんだ。
「そんなにむくれるんじゃないの。まぁた喧嘩したの?」
喧嘩にもならないよ。俺がこうやって怒ったところで次元には暖簾に腕押し。いつだってそうやって煙に巻かれるんだ。俺としちゃ結構重大な悩みなのに。だけど、そうやって一気呵成に吐いた俺の言葉をルパンはあっさりと一蹴して、またもけらけら笑い出す。
「あのねぇ五右エ門ちゃん」
釈然としないにもほどがある。でもあまりに俺がむくれていたんだろう。笑いながらもルパンは困ったように眉根を寄せた。
「あいつはね、お前さんが大事だからこそ面倒に関わらせたくないのよ? 全然冷たいどころか優しいじゃねぇの」
わかんないよ。どこが優しいんだよ。大体俺は大事にしてくれなんて頼んだ覚えはないし、そんなことに気を遣うぐらいなら対等に扱ってくれればそれでいいのに。俺のことは心配するくせに、俺が心配するのはダメだなんて可笑しいだろ。
「五右エ門ちゃんてば。だから坊やなんて言われちゃうんだぜ?」
余計なお世話だよ。ほんと言えば、そうやってルパンがあいつのことをわかったふうに言うのも面白くないんだ。二人だけで分かり合ってるみたいで置いてけぼりを喰った気分。そんなところも坊やって言われるんだって。わかっているけど。
「この意味がわかったらきっと、あいつももうちょっと大人扱いしてくれるだろうぜ」
そうやってまた笑うから、俺は小さくため息をつくしかない。
言われなくてもあいつが優しいのなんか最初から知ってる。
でももしあいつが俺のこんな気持ちに気付いてて、それでも俺をあえて対等にじゃなく特別扱いしてるんなら―――。
やっぱりあいつは冷たいと思うんだ。
Fin.
【あとがき】
ル様に『だから坊やなんて言われちゃうんだぜ?』って言われる原ゴエちゃんが書きたくて玉砕しました。